
住まい探しでAIに「住みやすい街」を聞いても、部屋のカビは分からない。聞き分け方と内見で確かめること
住まい探しでAIに任せるのは街の治安や家賃相場の下調べまでにして、部屋の湿気やカビと、自分が月に何日その家にいるかは、内見と自分の予定で確かめる方が住んでから困りにくいです。
引っ越し先を考え始めると、まずAIに「この駅の周り、住みやすい?」「このあたりの1LDKの家賃相場は?」と聞く人が増えています。答えはすぐ返ってきますし、候補の街を絞るにはかなり便利です。
ただ、街の答えがどれだけ正しくても、借りた部屋そのもので困ることがあります。僕がそうでした。街の情報とは関係のないところで、部屋に戻った翌日に熱が出て、結局ホテルへ逃げました。
ここでは、住まい探しの質問を「街」「部屋」「自分の暮らし方」の3つに分けて、AIに任せていい範囲と、自分で確かめる範囲の分け方を書きます。
AIに聞かれているのは、ほとんど「街」のこと
まず、いま住まい探しでAIがどう使われているかです。
全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)などが9月23日に公表した調査では、全国の20〜65歳5,000人のうち、住まい探しで生成AIを何らかの形で使った人は33.9%でした。20代に限ると53.4%です。使った目的で一番多かったのは「希望エリアの地域情報の収集・比較」で33.5%でした(全宅連「2026年 住宅居住白書」)。
別の会社の調査では、住まい探しの経験者507人に聞いています。AIで調べた内容の設問(回答245人)では「エリアの治安・住みやすさ」が47.23%で最も多く、「具体的な物件の比較・評価」は20.05%でした。情報源として信頼しているかでは、不動産ポータルが49.70%、生成AIは9.86%です(Iteraの調査)。
2つの調査は対象も時期も質問文も違うので、数字同士は比べません。ただ、どちらも同じ方向を指しています。人がAIに聞いているのは、部屋そのものより「その街で暮らせるか」の方です。
これは使い方として間違っていないと思います。治安、家賃相場、駅までの距離、スーパーの数。こうした街の情報は公開されているものが多く、AIが集めて並べるのに向いています。
僕が困ったのは、街ではなく部屋だった
僕は今年の6月初めまで、しばらくほぼホテル暮らしをしていました。大阪、沖縄、東京、宮古島と移動していて、借りている家にはあまり帰っていませんでした。
6月の初め頃、久しぶりにその家へ戻りました。翌日に熱が出ました。しばらくいると肌も荒れて、赤くなりました。埃なのかカビなのかは分かりません。調べた感じではカビっぽい、というのが当時の僕の見立てです。医師に原因を確かめたわけではないので、ここは僕の解釈として読んでください。
ただ、ここにいたらまずいとは思いました。結局またホテルへ移りました。
このとき気づいたのは、街の住みやすさと部屋の住みやすさは別物だということです。僕を追い出したのは、街の治安でも家賃でもなく、長く空けていた部屋の状態だと感じました。
そして、この種の情報はAIにはまず出てきません。治安や家賃相場は公開データがありますが、「この部屋の押し入れの奥がどうなっているか」はどこにも書かれていないからです。AIが悪いのではなく、答えの材料がそもそも存在しないのです。
質問を3つに分けると、AIに任せる範囲が見える
住まい探しの疑問は、ざっくり3つに分けられます。
一つ目は街の質問です。治安、家賃相場、通勤時間、買い物のしやすさ、災害の起きやすさ。これはAIに下調べを任せていい範囲です。
ただし、数字には「いつ時点か」を付けてもらってください。僕は以前、AIに株の時価総額を計算させたとき、AIが1ドル145円という古い為替で計算していて、答えが37兆円と278兆円のあいだで大きくずれたことがあります。家賃相場も同じで、いつの、どの間取りの、駅から何分の相場なのかで数字は変わります。前提が見えないまま比べないことが大事です。
二つ目は部屋の質問です。湿気がこもりやすいか、結露するか、換気扇がちゃんと回るか、日が入るか、前の入居者が出たあとにどこまで手を入れたか。ここはAIに聞いても一般論しか返ってきません。内見と、管理会社への質問で確かめる範囲です。
三つ目は自分の暮らし方の質問です。月に何日その家にいるのか。掃除にどれくらい時間をかけられるのか。家を長く空けることがあるのか。これはAIが勝手に聞いてくれることはほぼありません。自分で書き出して、AIに渡す側の情報です。
僕の場合、見落としていたのは三つ目でした。家を長く空けていたことと、戻って体調を崩したことは、つながっているように感じています。原因は確定していません。それでも、自分がどれくらい家にいるかで部屋の状態が変わるかもしれないことは、借りる前に考えておくべきでした。
内見で、僕なら確かめること
部屋の質問は、AIではなく現地で答えを取りにいきます。僕が次に部屋を選ぶなら、少なくとも次は見ます。
窓のサッシのまわり、押し入れやクローゼットの奥、北側の壁の下の方に、黒い点やしみがないか。
部屋に入った瞬間に、こもったにおいがしないか。
浴室と洗面所の換気扇が回るか、窓を開けられる位置にあるか。
そのうえで、管理会社には「前の入居者が出たあと、クリーニングやカビの補修はしましたか」「結露やカビの相談が過去にありましたか」と聞きます。答えにくそうにしたら、それも一つの情報です。
できれば晴れた日だけでなく、雨の日や雨上がりにも一度見たいところです。湿気の具合は天気で変わるからです。
暮らし方を渡すと、AIの答えも変わる
三つ目の暮らし方は、AIに渡すと答えそのものが変わります。これは僕の実例があります。
ホテル暮らしは掃除も管理も抱えなくていい一方で、固定費が高く、泊まる場所を探す手間もかかります。そこで僕は、家を空けているあいだだけ部屋を貸す「民泊」を住まいの選択肢として考えました。
5月31日、AIに条件をまとめて渡しました。那覇の中心部で、初期費用は50万〜100万円、部屋は買わずに借りる、掃除や運営は代行に任せる、空いているときは貸して自分もたまに泊まる、という条件です。
返ってきた答えは、おすすめの街の一覧ではありませんでした。その予算と「借りて運営する」形では成り立ちにくい、という結論で、理由には、那覇で使える制度の制約や、又貸し(転貸)の許可に関する点が挙がっていました。
この答えを受けて、公式の情報も確かめました。国の民泊制度ポータルサイトによると、住宅宿泊事業法で人を泊められる日数は年180日までで、始めるには都道府県知事などへの届出が必要です。
僕が考えていたのは「1週間住んで、残り3週間を貸す」形でした。4週のうち3週を貸すと、1年で約274日です。住宅宿泊事業法の枠で考えるなら、180日を大きく超えます。旅館業の許可を取る道は別にありますが、それはそれで別の要件があります。
もし暮らし方を書かずに「那覇で住みやすいエリアは?」とだけ聞いていたら、この壁には気づかなかったはずです。暮らし方を渡したことで、AIは街ではなく、仕組みそのものの問題を先に返してきました。
この件は、6月初めに沖縄の運営会社へ問い合わせたところまでが記録に残っています。その後、6月下旬には経費を締めるため、ホテル暮らしもしばらくやめると決めました。民泊を実際に始めたわけではないので、成否はここでは書けません。
AIに聞くときの頼み方
以上をまとめると、住まい探しでAIに頼むときは、次のように頼むと答えが使いやすくなります。
「〇〇駅の周辺で1LDKを探しています。家にいるのは月に20日くらいで、2週間ほど家を空けることがあります。重視するのは通勤30分以内と、湿気がこもりにくいことです。治安と家賃相場は、いつ時点の情報か付けて教えてください。部屋そのものについては、内見で確かめるべき点と、管理会社に聞くべき質問を挙げてください」
街の下調べはAIに任せる。部屋は内見と質問で確かめる。暮らし方は自分で書いて渡す。この分け方にしておけば、AIの答えが正しいかどうかと、その部屋で暮らせるかどうかを混ぜずに済みます。
最後に限界も書いておきます。僕の体調の原因は確定していませんし、一人の経験です。内見で見るべき点も、専門家の点検の代わりにはなりません。気になる症状があるときは、部屋の問題と決めつけず医療機関に相談してください。それでも「街は合っていたのに部屋で困った」という失敗は、AIに聞く前に質問を分けておくだけで、減らせると僕は考えています。