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AIに新しいツールを選ばせても、使わないツールを増やさない比較のしかた

AIに新しいツールを選ばせるなら、機能の多さより「今のやり方との差・試す範囲・やめる条件」を先に比べると、使わないツールを増やしにくいです。

「このAIツール、便利そう」「今のサービスより速そう」と思って、とりあえず契約する。数日後には使わなくなり、月額料金とアカウントだけが残る。仕事で新しいSaaSを選ぶときも、個人でAIサービスを試すときも、こうした無駄は起こり得ます。

問題は、AIに比較してもらっても起きます。「一番おすすめは?」「どれが高性能?」と聞くと、AIは候補をきれいに並べてくれます。でも、その比較だけでは「自分は本当に乗り換える必要があるのか」が抜けやすい。この記事では、AIを候補探しに使いながら、不要な導入を減らすために僕が今使っている考え方を整理します。


AIは「候補を出す人」としては、もうかなり使われている

2026年9月18日に公表された日本経済社の調査では、従業員100人以上の企業でITシステム導入に関わる会社員・役員1,200人のうち、72.3%が情報収集に生成AIを使っていました。使い方は「比較ポイントの整理」が49.5%、「候補製品・サービスのリストアップ」が34.1%、「見積り・費用感の確認」が34.1%です。

ここで重要なのは、「AIに最終決定してもらう」より前の工程で使われていることです。選択肢が多すぎるときに、何を比べるかを整理し、候補を減らし、費用感をつかむ。生成AIはこの前処理と相性がいい。

同じ9月18日に公表された家電購入のYouTubeコミュニティ投票でも、有効回答約2万1,000件の56%が「AIのおすすめをベースにしつつ、自分でも調べる」と答えています。一方、「かなり信頼して、そのまま買うこともある」は3%でした。この投票は自己選択型で、日本全体を代表する調査ではありません。それでも、「AIで候補を作り、人間が確かめる」という使い方が実際に広がっている例としては分かりやすいです。

僕も、候補探し自体はAIに任せます。むしろ人間だけで調べるより速い。ただ、最近は「候補の中でどれが一番いい?」より、「そもそも今のやり方を変える価値があるか?」を先に見るようになりました。


新しい機能より、「今との差」を先に見る

新しいツールの紹介ページには、たいてい魅力的な機能が並びます。高速、低コスト、自動化、高精度、連携、専用AI。どれも本当かもしれません。でも、「できること」と「自分に必要なこと」は別です。

たとえば、今使っているツールで1回10分かかる作業を、新しいサービスなら5分で終えられるとします。一見すると2倍速い。でも、その作業を月に2回しかやらないなら、減るのは月10分です。新しいアカウントを作り、設定を覚え、データを移し、障害時の対処を覚える時間の方が大きいかもしれません。

逆に、毎日100回行う処理が10分から5分になるなら話は変わります。同じ「2倍速い」でも、価値はまるで違います。

だからAIには、製品同士を比べる前に、まず現在地を書かせます。

「今は何を使っているか」「何に時間やお金がかかっているか」「どんな失敗が起きているか」「新しいツールを入れると、何が具体的に変わるか」。

ここが空欄のままなら、まだ製品比較に進まない。僕は以前から、外部ツールを一つ増やすたびに、選ぶ・つなぐ・覚える・保守する手間も増えると感じていました。実際、2026年9月には、開発用のIDEをいくつか解約・アンインストールしています。自分でコードを触る工程が減り、Markdownなどの軽い編集は標準エディタで足りると判断したからです。新しい道具を探すだけでなく、今の仕事に必要なくなった道具を減らすことも、ツール選びの一部でした。

新しいものを足すことには、見えない固定費があります。月額料金だけではありません。ログイン、権限、設定、データ移行、更新、障害対応、解約判断まで含めて「導入コスト」です。


「そのツールでなければ困ること」を1つに絞る

最近、僕は新しい判断用AIモデルを調べる機会がありました。調べ始める前に決めたのは、「広く導入しない」ことでした。

見るべきなのは、「この新技術でもできる場所」ではありません。「今の処理より、これを使う方が明確に適している場所」があるかです。

この差は大きいです。

新しいツールには、たいてい何十個も用途があります。全部を候補にすると、導入する理由はいくらでも作れます。「分類にも使える」「評価にも使える」「自動化にも使える」。それでは、ツールを使うこと自体が目的になります。

そこで、AIに候補を出させるときは、次のように逆向きに聞きます。

「今の方法で困っている処理を挙げる。その中で、この新しいツールを使うと明確に改善するものだけを残す。普通のコードや、今使っているAIで十分なら除外する。候補がなければ『導入しない』を結論にする。」

「導入しない」を正解として許すと、比較の質が変わります。AIは何かを推薦するためではなく、不要な候補を落とすためにも使えるようになります。

これは買い物でも同じです。新しいノートアプリを探すなら、「一番人気のアプリ」ではなく、「今のアプリで困っている1つのことを解決し、移行の手間を上回るか」を比べる。高性能な家電でも、今の製品で困っていないなら、買い替えない方が合理的なことがあります。


比較表には「やめる条件」まで入れる

候補が残ったら、次に小さく試します。ここで僕が重視するのは、成功条件だけでなく「やめる条件」を先に決めることです。

たとえば、新しいAIツールを評価するなら、精度、処理時間、API費用、再試行回数、人間の確認回数など、実測できる数字を決めます。そして「この数字を超えなければ採用しない」「誤判定がこの割合を超えたら戻す」と決めてから試します。

なぜ先に決めるのか。使い始めた後は、せっかく設定したから、もう少し試したいと思いやすいからです。すでに払ったお金や時間を惜しんで、本来ならやめるものを残してしまう。

僕が新しいAIモデルの候補を検討したときも、「小さく独立して試せる」「既存の方法へ簡単に戻せる」「短期間で差を測れる」「外しても元の仕組みが動く」を条件にしました。もしこの条件を満たさなければ、面白そうでも初回導入の候補から外します。

これは企業のIT導入でも、個人の月額サービスでも有効です。解約しやすさ、データを戻せるか、既存フローを残せるかは、機能表の下に小さく書かれがちですが、実際の損失を決める重要な比較項目です。


AIに渡すなら、この順番で十分

僕なら、新しいツールを調べるとき、最初から「おすすめを3つ教えて」とは聞きません。

まず、今の方法を説明します。次に、困っていることを1つ決めます。そのうえで「今の方法を続ける」「既存の別機能で解決する」「新しいツールを導入する」の3つを同じ表で比べてもらいます。

比べる項目は、機能だけでなく、現状から何が変わるか、初期設定にどれくらい手間がかかるか、毎月の費用はいくらか、失敗したときに戻せるか、何を測れば採用を判断できるかです。

最後に、「新しいツールを入れない方がいい条件も書いて」と足します。

この順番にすると、AIが出す答えは「製品ランキング」から「導入判断」に変わります。

前日のDailyでは、株の売り時をAIに相談するとき、先に売る条件を決める話を書きました。今回も条件を先に置く点は似ていますが、対象は投資判断ではありません。ツール選びでは、さらに「現状維持」を候補に含め、導入後に元へ戻れるかまで比較するのがポイントです。


「何を買うか」より、「何を増やさないか」もAIに考えさせる

AIで候補を探すこと自体は、これからさらに普通になると思います。実際、日本のIT導入調査でも、比較ポイント整理や候補リスト作成にすでに使われています。

ただし、候補が早く見つかるほど、導入も増やしやすくなります。検索に30分かかっていた頃なら諦めていたサービスも、AIなら数分で5個見つかる。その便利さは、同時に「使わないツールを増やす」危険も持っています。

だから、AIに選ばせるときは、推薦の精度だけを上げるのではなく、不要な導入を落とす条件まで渡した方がいい。

僕自身、AIをかなり使っていますが、「新しいAIだから使う」という判断はしないようにしています。過去の記録にも、AIへの熱狂と実装の価値は分けて考える、と残しています。実際に変わる処理があるのか。今より良くなるのか。小さく試せるのか。悪ければ戻せるのか。

この4つが揃って初めて、導入する理由になります。


参考にした公開資料