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AIに何度直させても良くならないとき、捨てる目安と次に持ち出すもの

AIの回答を直しても良くならないときは、指示を足し続けるより、決まったことだけ持って新しい会話でやり直す方が早いです。

資料の要約を頼んだら、欲しかった部分が抜けている。「ここも入れて」と伝えると、今度は別のところが薄くなる。もう一度直すと、最初に良かった段落まで変わっている。気づくと同じ会話を30分往復していて、最初の出力より良くなったのかどうかも分からなくなる。

減るのは時間だけじゃない。往復するうちに、自分が何を直してほしかったのかが曖昧になって、最後は「まあ、これでいいか」で止めてしまう。仕事なら、その「まあいいか」がそのまま提出物になります。

この記事では、直し続けるのをやめる目安と、やり直すときに前の会話から何を持ち出すかを書きます。AIを信用しないという話ではありません。同じ会話の中で直すことにも向き不向きがある、という話です。


多くの人は、原因を自分の指示に見ている

株式会社アイガモが2026年9月に公表した調査では、週1回以上生成AIを使う131人のうち、77.1%が「期待と違う回答が返ってきた」経験があると答えています(よくある16.8%、ときどきある60.3%)。調査期間は2026年9月2〜4日、有効回答は全体で330人です。

原因として挙げられたのは、「自分の指示が曖昧だった」45.8%、「必要な情報を渡せなかった」34.4%、「文脈や背景を伝えられなかった」29.0%。「AIの性能や知識の限界」は19.8%でした。

この標本は週1回以上の業務利用者に限られるので、日本全体の割合ではありません。それでも、多くの人が原因を自分側に見ていることは読み取れます。その見立て自体は間違っていないと思います。

問題はその次です。足りなかったと分かったら、たいていは同じ会話の中で説明を足す。自然な流れだし、実際それで直ることもあります。僕がつまずいたのは、直らなかったときに何回まで続けるかを決めていなかったことでした。


直すほど、別の場所が崩れていく

2026年8月11日の記録に、僕は「永久ループになる」と書いています。

そのころは、AIにまずプロトタイプを作らせて、そこから細部を調整していく進め方をしていました。正しい順番に見えます。ところが細かいところを直すたびに新しい問題が出て、終わらない。動いてはいるのに完成しない。時間だけが溶けていく感覚がありました。

そこで変えたのは、指示の書き方ではありません。仕様とやりたいことを一つにまとめて渡し、一度で最後まで作らせる形にしました。できあがったら、そこからは動かさない。直すのは軽いバグくらいにして、新しい機能は足さない。新しいモデルが出たら、また一から作り直す。

これは僕がそう決めた運用方針で、何かを測って導いた結論ではありません。書けるのは、少しずつ直し続けるやり方では終わらなかった、ということです。


一発目が上限になる、という見え方

8月の終わりに、もう少し言葉になった感覚があります。

AIに材料を渡すと、一発目の出力はいい。でも二発目、三発目で一発目を超えるのが難しい。僕の感覚では、最初の出力が上限になって、そこに悪い出力が混ざると、上限と悪い出力の平均が次の基準になる。そうやって少しずつ下がっていきます。

念のため書いておくと、これは僕がそう感じているという話です。モデルの仕様を確かめたわけではないし、直す前と直した後を数値で比べた記録もありません。だから「AIはこういう仕組みです」とは書けない。書けるのは、直し続けた先の出力が最初より良くなったという実感が、僕には残っていないことです。

もしあなたの手元で、3回目の修正が1回目より明らかに良くなっているなら、この記事の前提はあなたには当てはまりません。そのまま続けた方がいいと思います。


履歴が溜まる場所では、同じことが起きた

9月に入って、これがもっと見えやすい形で出ました。

僕は毎日動く定期タスクでコンテンツを作らせていました。定期タスクは、回を重ねるたびに同じ履歴が溜まります。過去の出力やそのときのノイズが混ざり続けた結果、できるものが平均に寄っていきました。似たものは作り続けられる。でも良くはならない。

同じ時期に、出力が落ちる原因として別の仕組みを疑ったこともあります。ただ、そちらは僕が仕様まで確かめられておらず、仮説のままです。原因を一つに決めてはいません。

はっきりしているのは、対処の方です。制作そのものを、定期タスクの履歴から外しました。定期タスクに残したのは、その日のデータと置き場所を書いた指示を作ることだけ。作る作業は、履歴を持たない新しいセッションへ渡します。

自動化の話に見えますが、手で使う会話でも同じことができます。長くなった会話を閉じて、決まったことだけを新しい会話へ渡す。やっていることは変わりません。


捨てる目安を、回数で決めない

「あと1回直せば」と思えるうちは、何回でも続けられます。だから回数では決まりません。僕が見ているのは次の3つです。

直すたびに、別の場所が崩れるようになったか。Aを直すとBが崩れ、Bを直すとAが戻る。これが2周したら、その会話はもう全体を保てていません。

何を直してほしいのか、自分で一文で言えるか。言えなくなっているなら、足りないのは指示ではなく自分の中の整理です。会話を続けても整理は進みません。いったん離れて、メモでもいいので先に書く方が早い。

最初に出した条件が、今も効いているか分かるか。長い会話では、途中で足した例外が前の条件を上書きしていることがあります。どれが生きているか分からなくなったら、確認して回るより書き直した方が短く済みます。

一つでも当てはまったら、僕はその会話を閉じます。


捨てるときに持ち出すもの

会話全体をコピーして新しい会話へ貼り直すと、意味がありません。混ざっていたノイズをそのまま持っていくことになります。

持ち出すのは、その会話で決まったことだけです。僕は4つ書きます。

何を作るのか。最初の目的で、途中で変わったなら変わった後のもの。

決まった条件。往復の中で確定した仕様で、「やっぱりこうする」で落ち着いたもの。

材料の置き場所。ファイル名、URL、データのある場所。

やらないこと。途中で捨てた案です。書いておかないと、新しい会話が同じ提案をもう一度出してきます。

逆に持ち出さないのは、失敗した出力そのもの、途中の謝罪や言い訳、試して捨てた指示です。

これを新しい会話の最初に一度で渡します。うまくいけば、往復していた30分が一回で終わる。うまくいかなければ、4つのどれかが足りていないので、そこを足してまたやり直す。そのときも、同じ会話の中では直しません。


捨てない方がいい仕事

全部捨てればいい、という話ではありません。僕が捨てないのは次のような場合です。

ほぼ完成していて、残りが誤字や数値の直しなど、見れば分かるもの。毎回同じ手順で終わる機械的な作業。直した結果を自分ですぐ確認できて、間違っていても戻せるもの。

8月に決めたやり方も、完成後は軽いバグだけ直す、という形でした。一度で作らせるかわりに、細かい調整を完全にやめたわけではありません。

分けているのは、作業の性質と、間違えたときに失うものの大きさです。やり直しが数分で済むなら、同じ会話で粘っても損はしません。締め切りのある提出物や、人に出す資料のように、往復のたびに使える時間が減っていく仕事ほど、早めに切った方が残ります。


まだ確かめていないこと

ここまで書いたのは、僕が自分の制作で見てきたことと、そこから決めた運用です。実験ではありません。

新しい会話でやり直すと質が上がる、ということを数値で比べた記録は僕にはありません。出力が平均に寄るという感覚も、モデルの仕様として確認したものではない。定期タスクで質が落ちた原因も、一つに特定できていません。

それでも、8月から今日まで、直し続けた会話が最初より良くなった記憶は僕にはなく、捨てて渡し直した方が早く終わっています。

次に「もう一回直して」と打ちそうになったら、その前に一度だけ、さっきの3つを見てみてください。当てはまらなければ、そのまま直した方が早い。当てはまるなら、閉じて、決まったことだけ持って開き直す。僕はいま、そこで迷わなくなった分だけ、作業が短くなっています。


参考にした公開資料