AIで作れるようになった人が、次に時間を溶かす場所

AIに指示を出すだけでサイトやアプリが作れる、という話の次に必ず来るのが「じゃあ何を勉強すればいいのか」です。検索して出てくる答えは、驚くほど一致しています。コードを一字一句読めなくてもいい。ただ、大まかな理解は後から必要になる。人に使わせるものなら、AIが書いたコードも人間が書いたのと同じ基準でレビューする。セキュリティの話が必ず添えられます。
どれも間違っていません。ただ僕は、この答えのとおりに走って、時間だけ溶かしました。
サポートへの返信が、勝手に終わっていた
9月3日にGPT-6が出ました。売りはコンピュータの操作です。
僕はいま、データのエクスポートの件でOpenAIのサポートとやり取りをしています。そのメール対応を、頼んでもいないのにエージェントが勝手に片付けていました。「エスカレーションしてください」とか、「ちょっと誤解していると思います」と言いながら、技術的な説明まで添えている。
OpenAIの製品のモデルが、OpenAIのサポートと連絡を取り合っているわけです。もう社内のコミュニケーションみたいになっている。
感覚としては、優秀な従業員が増えた、というのがいちばん近いです。ただし、優秀な従業員に「結果を出せ」と言っても、それだけで結果が出るわけではありません。
見た目に答えはない
作れるようになると、次に手が伸びるのはサイトの見栄えとUI/UXです。大事なのは大事なんですが、結果には直結しません。しかも、こだわり出したらきりがない。この領域には答えがないからです。
答えがない仕事は、やっている最中はずっと前へ進んでいる感じがします。減っているのは時間だけです。作り込むほど「もっとちゃんとやらないと」という理屈のほうが強くなるので、自分では止まる理由が出てきません。
手を離したら良くなった
やめられたのは、我慢したからではありません。AIに投げたほうが、単純に良いものが出てきたからです。
センスがいいとか悪いとかは、ぶっちゃけそんなに関係ありませんでした。ちゃんと指示すれば、センスのいいものが出てくる。むしろ人間が関与しないほうが良くなる。少なくとも僕の手元では、ここは何度やっても覆りませんでした。
自分の手が入るほど良くなるはずだ、というのが最初の前提でした。間違っていたのはその前提のほうです。
編集だけは戻ってくる
これを「難しい仕事はAIに任せろ」という話にすると、手元の事実と合いません。
ショート動画のチャンネルを3年ほど運用しています。編集をAIに渡そうとして、何度も挑戦しました。やっぱりできない。自分の品質を超えてこないんです。いまエージェントに任せているのは、調査と配信だけです。
その調査のほうでは、逆のことが起きました。運用しているチャンネルのトレンド調査をやらせたら、僕の考え方をある程度理解したレポートが返ってきた。トレンドを複数調べて組み合わせる、という僕のやり方の癖まで拾っていました。そこまで期待していなかったので、少し驚きました。
見た目を整える仕事は手放したら良くなり、動画を切る仕事は何度渡しても戻ってきた。難易度で並べると、順番が逆です。
開発者のほうへ寄っていく
コーディングエージェントが出てきたときのパラダイムは、素人が開発者にできることをできるようになった、ということでした。開発者にはない視点、開発者が考えないこと。素人がそれをやるから意味があった。
僕がやりかけていたのは、その逆です。使えるようになるほど余計な知識が増えて、素人が開発AIを使って開発者になっていく。手放しかけたのは、いちばん値段が付いていた場所でした。
戻ってこなかった動画の切り方も、AIが拾ったトレンドの組み合わせ方も、開発の勉強からは出てきていません。3年、素人のまま数字を追いかけた側から出ています。
開発やものづくりは単純に楽しいので、そっちへは何度でも寄っていきます。
触るのが自分だけなら
勉強するな、という話ではありません。冒頭の答えには条件が付いていて、それは「作っているものを、自分以外の誰かが使うか」です。人に使わせるなら、レビューできる知識は保険ではなく必須で、セキュリティの警告はそういう人に向けて書かれています。
これは僕1人の運用の話なので、他の人が同じ線で分かれるかは分かりません。ただ、判定そのものは簡単でした。いま自分が直しているものを見て、それを触るのが自分だけなら、たぶん溶けている最中です。